お金持ちって、普通の人と何が違うんだろう。
ずっと気になっていた。でも周りにそういう人がいないから、比べようがない。
「お金持ち 特徴 行動」と検索してみた。出てくるのは「早起きする」「読書量が多い」「人脈を大切にする」みたいな話ばかり。どこかで聞いたことのある話ばかり。
そういう話じゃなくて、もっとリアルなやつが知りたい。
だから俺は、自分の足で観察しに行くことにした。
まず、どこへ行けばいいのか
AIに聞いてみた。
「富裕層が日常的に行く場所を教えてください」と入力したら、「百貨店の上階、高級レストラン、ゴルフ場、プライベートジムなどが挙げられます」と返ってきた。
正しいと思う。でも、ゴルフ場には入れない。高級レストランは、ランチ一食で日当が消える。
AIはいつも正論しか言わない。俺の財布を知らないから。
結局、自分の足で行けそうな場所を選んだ。近所の百貨店。入場料はない。それだけが根拠。
6階のインテリアフロアで、俺は完全に浮いていた
フロアに入った瞬間、空気が変わった。
静かで、落ち着いていて、ゆったりしている。仕事終わりのまま来たのが失敗だったかもしれない。
店員さんと目が合うたびに、心の中で謝り続けた。
すみません、買う気はないんです。ただ見ているだけです。
それでも観察は続けた。買い物をしている人たちを、さりげなく、でもじっくり見た。
最初に気づいたこと——急いでいない
動きが、ゆっくりだった。
商品を手に取るのがゆっくり。棚の前で考えるのがゆっくり。店員さんと話すのも、ゆっくり。
俺は逆だ。スーパーでもコンビニでも、「早く選ばなきゃ」という焦りがある。後ろに人が並ぶとパニックになる。
で、よくわからないものを買って帰る。
調べてみたら、これには理由があるらしい。
焦りがあると、人は「損失回避」の心理が働きやすくなる。「今買わないと損する」という感覚が強くなるのだ。特売の「残り1個」に弱い俺は、完全にこれだった。
冷静に考えれば要らないものを、「今だけ」という言葉に負けて買い続けてきた。何年も。
次に気づいたこと——値段の見方が逆だった
俺は値札を先に見る。
いくらかを確認してから、じゃあどんな商品かを見る。それが当たり前だと思っていた。
でも、フロアにいた人たちは違った。まず商品を手に取って、眺めて、触って、そのあとで値段を見ていた。
順番が、逆だ。
あとで調べたら、これは「価値ベースの意思決定」と呼ばれる考え方らしい。要するに、「これは自分にとってどれだけ価値があるか」を先に考えてから、値段と照らし合わせる習慣のことだ。
逆に「安いから買う」という行動は、価値より価格を先に判断している状態。本当に必要なものより、「お得感」で選んだものが家に増えていく。
俺の押し入れを思い浮かべた。安売りで買ったけど使っていないものが、いくつか浮かんだ。
思い当たりすぎて、もうやめた。
いちばん印象に残ったこと——人への接し方
これが一番、刺さった。
店員さんにちゃんと「ありがとう」を言っていた。コーヒーを持ってきたスタッフに、顔を上げて会釈していた。
当たり前といえば当たり前。でも、俺はできているかというと、自信がない。
スマホを見ながら受け取ってないか。無言で受け取ってないか。
これがお金と直接つながるかは、正直わからない。でも「信頼される人のところに仕事が来る」という話は、なんとなく腑に落ちた。
丁寧な人は、また頼まれる。また頼まれると、また稼げる。そういうことかもしれない。証明はできないけど、否定する気にもなれなかった。
観察を終えて、コーヒーを飲んだ
帰り際に、少し値の張るコーヒーショップに入った。普段は入らない店だ。
450円のコーヒーを頼んだ。受け取ったとき——
俺はスマホをいじりながら、片手で受け取っていた。
席に座ってから気づいた。
さっき「お金持ちの人は丁寧に接していた」と観察してきた、その30分後に、自分はやっていなかった。
知識を仕入れることと、行動が変わることは、全然別の話だ。それを身をもって証明してしまった。
なんか、急に恥ずかしくなった。
観察してわかったこと、正直に書く
「お金持ちの秘密がわかった!」みたいな結論は、書けない。
俺が見たのは、ただ「落ち着いていて、丁寧で、焦っていない人たち」だった。すごい技を使っているわけじゃない。特別な知識を持っているわけでもない。
ただ、急いでいなかった。
それだけのことが、俺には難しかった。
俺に足りないのは、お金の知識より先に「焦らないこと」かもしれない。そう思ったら、なんか急に遠い話じゃなくなった気がした。
コーヒーを受け取るとき、次はスマホをしまおうと思う。
そこだけは、明日からでもできる。
岡根健作のひとりごと
焦りがあると、人は「今買わないと損する」という気持ちに負けやすくなる。これ、行動経済学では「損失回避バイアス」という名前がついている。
つまり俺がずっとやってきた「特売に飛びつく」という行動は、心理の罠にはまり続けていただけだった。知らなかったのは俺だけかもしれないけど、知れてよかったと思っている。

